〜800ドル超のB2C貨物が一時停止、IEEPA・デミニミス撤廃・3社比較で考える〜
2025年4月17日、DHLからアメリカ向け貨物の発送に関する非常に重要な通知が発表されました。
この通知は、アメリカ向けの申告価格が800米ドルを超えるB2C貨物(個人宛て)の輸送が一時的に停止されるというもので、多くの輸出業者にとって無視できない内容です。
今回はこのDHLの通達内容を詳しく見ていくとともに、関連するアメリカの法律「IEEPA(国際緊急経済権限法)」、さらに「デミニミス政策」の適用撤廃にも触れながら、DHL・FedEx・UPSの違いについても比較し、今後の対策を考えていきます。
DHLからの正式通達の概要

2025年4月17日、DHLは公式に以下のような通知を発表しました。

- アメリカ大統領令に基づき、申告価格が800ドルを超えるB2C貨物については正式通関が必要
- 発送者は、詳細な貨物説明、HSコード(10桁)、原産国、受取人のEIN(法人)やSSN(個人)などの提出が求められる
- 通関処理が大幅に増加し、輸送遅延の可能性あり
- 2025年4月21日以降、800ドル超のB2C貨物は発送停止(再開時期未定)
- B2B貨物(法人宛)や800ドル未満のB2C貨物は通常通り発送可能

【中国語原文】
致客户公告:关于寄往美国货件运输延迟及价值超800美元的B2C货件临时暂停的重要通知
发布时间:2025年4月17日
尊敬的客户:
感谢您选择DHL快递,我们希望借此机会与您沟通一些关于向美国发货的重要信息。这些信息涉及海关申报价值超过800美元的货物运输,并可能影响到您的发货计划。
根据美国总统最近签署的行政命令,世界各地发往美国的货物,如果申报价值超过800美元,现需接受更严格的入境审核。根据《国际紧急经济权力法》(IEEPA) 新规规定,之前可使用非正式报关的货物(价值在800美元至2500美元之间)现在都需以正式报关。需要发件人提供详细的货物描述、10位美国海关税则编码(HTS)、货物原产国(COO)、收件公司税号(EIN,适用收件方为公司)、收件人SSN(Social security number,适用收件方为个人)。
由于这一变化,导致正式报关数量激增。尽管我们已经全力以赴应对这些激增的申报量,但仍可能会出现多日的运输延误,尤其是对于申报价值超过800美元的货物。
为了确保我们能继续为您提供高质量的服务,我们决定从2025年4月21日起,对B2C货件(收件人为美国个人,且申报价值超800美元货件)暂停服务,直至进一步通知。请注意,申报价值低于800美元的B2C货件不受影响,B2B货件(收件人为美国企业)可正常发运,只要收件人信息完整、资料准确。
我们也将持续关注此类变化与您保持沟通,以便您能够及时进行业务规划。感谢您对DHL快递一如既往的理解与支持,如您有任何疑问或需要进一步的协助,欢迎联系您的客户经理。
【日本語訳】
お客様へのお知らせ:アメリカ向け貨物の輸送遅延および800米ドルを超えるB2C貨物の一時停止に関する重要通知
発表日時:2025年4月17日
お客様各位:
平素よりDHLエクスプレスをご利用いただき、誠にありがとうございます。今回は、アメリカ向けの発送に関する重要なお知らせをさせていただきます。内容は、申告価格が800米ドルを超える貨物の輸送に関するものであり、お客様の発送計画に影響を及ぼす可能性があります。
アメリカ大統領が最近署名した大統領令により、世界中からアメリカへ発送される貨物について、申告価格が800米ドルを超える場合、より厳格な入国審査が行われることになりました。新たな規定では、従来非正式通関で対応可能だった貨物(800〜2500米ドル)についても、正式通関が必須となります。これに伴い、発送者は詳細な貨物説明、10桁のアメリカ関税分類コード(HTS)、原産国(COO)、受取会社の納税者番号(EIN、法人宛の場合)、受取人の社会保障番号(SSN、個人宛の場合)などの情報提出が求められます。
この変更により正式通関の申請が急増しており、弊社では最大限の対応を行っておりますが、800米ドルを超える貨物においては、複数日間の輸送遅延が発生する可能性がございます。
このような状況の中でも高品質なサービスを継続提供するため、2025年4月21日より、申告価格が800米ドルを超えるB2C貨物(受取人がアメリカの個人)について、一時的にサービス提供を停止することといたします。再開時期は未定ですので、あらかじめご了承ください。なお、800米ドル未満のB2C貨物、またはB2B貨物(受取人がアメリカの法人)については、受取人情報が正確であれば通常通り発送可能です。
弊社では今後も状況を注視し、随時ご案内を差し上げる予定です。引き続きのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。ご不明点がございましたら、担当の営業までお気軽にお問い合わせください。
そもそも「800ドル未満」はなぜOKだった?──デミニミス制度とは

これまでの越境ECが比較的スムーズに行えていた背景には、「デミニミス(de minimis)」制度がありました。これはアメリカが定める少額輸入品の免税制度で、申告価格が800米ドル以下であれば関税も通関も不要でスムーズに個人宛に配送できるというものです。
日本からアメリカへの越境EC事業者にとって、この制度は極めて大きな追い風であり、手続き簡略化や通関コスト削減を実現してきました。
しかし、2024年後半からこのデミニミス制度の対象範囲が段階的に見直され、現在では中国ならびに香港発の商品を中心に適用撤廃が進んでいます。
特に、以下のような規制強化が行われました:

- 一部の国・発送元(特に中国)に対してデミニミス適用を除外
- ブランド品や指定カテゴリ(医療品、電子機器など)に対しては800ドル未満でも正式通関を要求
- 大統領令やIEEPA(後述)に基づく新たな通関強化方針
この点については、私の過去記事【トランプ大統領が発表「中国・デミニミスルール適用終了」米国アマゾン物販への影響は?関税の計算方法(CIF価格)とアンダーバリューについて】でも詳しく触れています。

記事の一部を要約すると以下の通りです:
「800ドル以下なら免税で通せる」という常識が、もはや過去のものになりつつあります。特に中国発の商品は、デミニミス制度の適用除外が進んでおり、知らぬ間に通関拒否やペナルティを受けるケースも散見されるようになっています。
つまり、「800ドル未満だから安心」では済まされない時代が到来したということです。
「IEEPA」とは何か?──輸出制限の法的根拠

今回のDHLの通達の根拠となったのが、IEEPA(International Emergency Economic Powers Act)=国際緊急経済権限法です。
この法律により、アメリカ大統領は「国家の安全保障や経済的脅威」と判断すれば、経済活動や貿易を制限する権限を持ちます。
現在、IEEPAの適用によりアメリカへの輸入における透明性確保と安全保障が強化されており、以下のような流れが見られます:
- B2C貨物への監視強化
- 宛先が個人であっても、詳細な貨物情報と受取人情報の義務化
- 不完全な書類の貨物は返品または廃棄の対象に
つまり、今回のDHLの措置は、単なる輸送会社の都合ではなく、国家レベルの政策転換に基づいているというわけです。
DHL・FedEx・UPSの比較:どの輸送会社が最適か?

輸送業者 | 特徴 | 強み | 注意点 |
---|---|---|---|
DHL | ヨーロッパ系。アジア発北米便に強い | 通関が比較的スピーディ | 米国ではFedEx・UPSに比べると認知度がやや低い |
FedEx | アメリカ本拠。航空輸送に特化 | アメリカ国内での配送精度が高い | 通関に厳格。貨物遅延時の交渉に時間がかかることも |
UPS | 世界最大級の物流企業。B2Bに強い | 法人取引での安心感。追跡精度が高い | B2Cは料金がやや高めの傾向あり |
現在のように通関書類が厳格化されていく中では、通関対応力とカスタマーサポートの質が選定基準として重要になってきます。
今後の対応策:今、何をすべきか?

1. B2Bモデルへの移行
800ドル超の商品を法人宛に変更することで、正式通関に対応しやすくなります。現地法人との取引や、B2B向け商品企画を視野に。
2. アメリカ現地在庫/FBA戦略
自社発送の越境EC(アマゾンでは「FBM」)ではなく、アメリカ国内のアマゾン公式倉庫に在庫を予め納品する「FBA」を活用する体制へ切り替えるのも選択肢の一つです。
まとめ

かつては「800ドル未満なら楽に輸出できる」という時代がありました。しかし今は、IEEPAの影響とデミニミス制度の撤廃、そしてDHLなど輸送業者の対応変化により、越境ECに求められるルール遵守と情報管理の水準は大きく引き上げられています。
だからこそ、輸送方法、ビジネスモデル、取引形態を含めた本質的な見直しが求められているのです。

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